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三日目・卒業式
とうとう迎えた二回目の卒業式は、変わらず清々しいほどの晴天で迎えた。
「卒業証書、授与」
「卒業生、答辞」
「在校生、送辞」
「一同、ご起立ください」
恙なく進んでいく卒業式。全校生徒が参加することもあり、在校生席にチヒロやソウタ、他の攻略対象の姿がちらほら。そしてコウの隣には、変わらずレイが座っている。
「――卒業生が退場します。拍手でお送りください」
そうして拍手喝采の中、体育館から出て行く卒業生たち。
(問題はここからだ)
一人眉間に皺を寄せるコウは、周りの流れに合わせつつ。視界にレイの姿を捉え続ける。
『糸衣さんは、先輩のことを運命だと思っていたみたいですよ』
『は?』
ファミレスで交換していたIDを利用し、その日の内にソウタはそう報告をした。
『多分、ずっと前に会ったことがあるとか』
『そーゆー感じの話っぽかったと思います』
ずっと前に会ったことがある。それについて過去の卒業アルバムを見ても、写真フォルダにもレイは居ない。ただ、母の話で興味深いことがひとつあったくらい。
『それに先輩も、異能力持ってたんですね』
「俺の、異能力」
コウ自身に異能力を持っている実感は全く持ってない。それに背景であるモブにそんな設定は存在しないと考えていたが。
「っ、レイ!?」
ふと気がつくとレイが視界にいない。ぐるぐると見渡すと一足先に校舎へと戻る背中を見つける。
「おいコウ、一緒に写真――」
「わりい!! ちょっとトイレ!」
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