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 優くんの右手を握る私の左手は、無意識に力が入る。優くんも握り返してくれた。指と指を絡め結んだ手が、私の不安を減らしてくれる。 「何も伝えず連れてきちゃってごめんね。暗くて分からないけど、俺たちは今、湖に突き出した桟橋の先端にいるんだ」  そう言った優くんは、からっとした声で「とっておきのこの場所を探すのに、手間取っちゃった。ハハ」と言った。   「風が無いと、今みたいな鏡となる。そこに夜空を映せば、手の届くところに星空が来る。覚えてるかな? 茜ちゃんが、天の川の水を飲みたいって云ったこと」 「うん、覚えてる」  確かに、足許に天の川があった。天の川の水のことも、勿論覚えていた。  優くんは上着のポケットから紙コップを取り出した。水際で上半身を下げ湖の水を少しだけ掬うと、私に渡し「飲んでみて」と促す。コップの中を覗くと、天の川色をした水にフワフワと星の光が反射していた。 「凄い。本当に、天の川の水だ」
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