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 案の定、返事はない。もしもすぐに返信があった場合、優くんは仕事をさぼっているということになる。私は庭の向日葵(ひまわり)を見た。五十坪ほどある花壇を、金糸雀(カナリア)色の花びらを満開にした向日葵が敷き詰められている。2から3メートルもある向日葵の集団は圧巻だった。  ヒラヒラと蝶々が横切る。丸みの無い黒い羽にハワイアンブー色のストライプ柄。アオスジアゲハだ。いつ見ても綺麗である。  思考を停止した状態で、暫く庭の景色を眺めていた。すると、私のスマートフォンからSNSの着信音が鳴った。優くんからだ。すぐに通知をタップした。  〉なに?  『なに』と言われても、特に何も無い。用事が有った訳ではない。ただ、仕事中も優くんに、私のことを思い出して欲しかっただけである。きっと、仕事の合間を縫って返信してくれたのだろう。何か返さなければ面目が立たない。  〉もうすぐ七夕だね。天の川見えるかな?  〉今聞くことか?  即答だった。仰る通りである。全く持って今聞く必要はない。今更ながら、「用事は無いよ、忙しいのに返信してくれてありがとう」と送れば良かった。
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