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 茂みを抜け出ると、少し開けた場所に出た。湿地帯か池か、貯水槽か、暗くて分からないが、辺り一面に水が広がっているように感じた。蛙や虫の音が聞こえる。なのに、草木の揺れる音は聞こえない。だから風が無いことに気付いた。私たちを取り巻く空気が、ランタンの明かりで黄色くぼやけ、どんな場所にいるのかほとんど分からなかった。  枯れ枝や土を踏む足音が、コツコツという木板の上を歩く音に変わった。木板は、ひと一人通れるほどの幅だ。水面かと思っていたが、逆さまに映るランタンの、揺らぎの無いくっきりとした状態から、鏡の床にしか見えなかった。  優くんの右手は、私の左手を握ったままだ。大きくて、温かい。少し汗ばんでる。草を掻き分ける作業が大変だったのかもしれない。 「怖くない?」低いけれど良く通る声が、優しく訊いてきた。 「優くんと一緒だから、大丈夫」  こんな、人も、明かりもない場所に来てどうするんだろう。 「じゃあ、明かりを消すよ」 「う、うん」
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