夏の夜の花火

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僕の名前は『星夜(せいや)』、静岡県立高校に通う18歳の高校3年生の男子で、大学進学を目指して受験勉強中だ。 僕は野球部に所属していたけれど7月下旬に開催された全国高等学校野球選手権大会の静岡県大会で敗退し、7月末に2年生に部活を引き継いで引退した。 野球部を引退してからの僕は夏休み中ということもあり何か気が抜けたような感じになって、大学進学を目標にしているにもかかわらず何から手を付けたらいいのかわからない状況に陥っていた。 8月に入ったある日、僕は少し気晴らしをしようと思って、自宅を出て散歩することにした。 僕の自宅は山の中腹にあって富士山が目の前に見える景色の良い場所だけれど、さらに山道を登って行くと公園と無人の小さな神社がある。 僕は公園を散歩しながら小さな神社に行って、賽銭箱の前に立つと猫の泣き声が聞こえてきた。 猫の泣き声が聞こえる方にそっと歩いて行くと、境内の裏手に小さな段ボール箱が置かれていて、その段ボール箱の中から猫の泣き声が聞こえてくるようだった。 僕が段ボール箱の近くに行って箱の中を覗いてみると、箱の上は開いていて中に白くて小さな子猫がいて、弱々しい小さな声で泣いていた。 この子猫は捨て猫だと思った僕は、まずはペットボトルの水を片手に注いで子猫の口の前に差し出すと、子猫はぺろぺろと舌を出して水を飲み始めた。 僕はこの子猫はきっとお腹を空かせていると思って、一旦その場を離れて少し山を下った所にあるコンビニに行って、おにぎりとパン、牛乳、紙皿を買って神社に戻った。 早速おにぎりとパンを手で細かくして紙皿に乗せて段ボール箱の中に置くと、子猫はおいしそうに食べ始めた。 僕は何故か飽きることなく、子猫が食事するところをいつまでもじっと眺めていた。 僕はこの子猫を自宅に持ち帰ろうかとも思ったけれど、きっと動物が嫌いな母が嫌がるだろうと思って、そのままにして持ち帰るのをやめることにした。 僕は別の紙皿の周りを上側に折り曲げて、少し深い皿を作って、そこに牛乳を入れて段ボール箱の中に置いた。 すると子猫は、ミルクをおいしそうに飲み始めた。 少しお腹が落ち着いたのか、子猫は僕の顔を見て、 「ミャー」 と小さな声で鳴いた。 子猫は僕の顔をじっと見つめているようだった。 僕は残りのミルクを紙皿に注いで、少し名残惜しい感情を抱きながらその場を離れて自宅に向かった。 自宅への帰り道、僕はその子猫のことが心配になって、明日も神社に行ってみようと考えていた。
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