螢火

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坊っちゃんも俺の適当さに慣れて(?)くれているので、そのまま話を続ける。 「兄さあは、かかどんに似ちょるから、肌が白いんじゃ。そう言えば、わいも白かね」 「……まあ、俺の故郷では肌が白い奴の方が多いですよ。神父さまもそうでしょう?」 神父さまの名前を出したのなら、確かめるまでもなく興奮して、いつもの奇声を上げるので、うるさいと思いつつも落ちないように背負い直した。 「そうじゃった!神父どんも確かに肌が白い、よかにせじゃ!」 「確かに、よかにせではありますね」 これは俺も認めているところで、そして神父様自身は自分の顔の良さをきっと自覚して、最大限に活用している。 教会に寄付を募る際には、その顔の良さを最大限に活かして、富豪の奥方に片目だけ瞑って見せたり("ういんく"というらしい)して、頬や耳を紅くさせていた。 最近では富豪の奥方様だけではなく、近所の農家の長男坊や、仕立て屋の息子等にもそのを発揮して、金銭面だけではない援助も見事に獲得していた。 「そいで、わいは肌の色が白かで、わっぜむぜかね!」 「……それは、どうも、ありがとうございます」 ちょっと照れつつ顔を真っ赤にしながらも、坊っちゃんが背中から俺に向かって、とても可愛らしい声でそう告げてくれるので、これに対しては適当は控えて、に少しだけ間をおいて答える。 最近、坊っちゃんのお国言葉にも慣れてきて、俺にも、坊っちゃんが俺に向かって「とてもかわいい」と言ってくれたことに関しては流石に理解できた。 しかも、言う時には俺にしがみついている可愛らしい手にキュっと力をいれてるから、坊っちゃんなりに勇気を少しいることなんだというのも伝わってくる。 だからそんな可愛らしい勇気に俺なりに、真面目に答えている用に聞こえるように声を出して、返事をした。 そんなつもりではあるけれど、もし坊っちゃんが雇い主の御子息じゃあなければ、きっとひどい言葉で否定をしていたことだろう。 俺のどこをどうみたら、可愛いという発想になるのか、皆目見当がつかない。 可愛いというのなら、精々お屋敷が使用人の為にとと用意してくれた、この西洋風のメイド服ぐらいなものだろうが、俺が身に付けたなら、それが台無しになっている気もしないでない。 「そんでな、兄さあにも、わっぜむぜなわいがいるち、いっちょるからな!」 「……はあ?!」
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