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「概念封印、解除」
刀の木でできた部分が割れ、中から銀色の刀身が姿を現す。
なぜか分からないけど、ここまでずっと身体に巻いていた古ぼけたローブを脱ぎ捨てる。
とりあえず崖下に降り、棍棒を振り回すキングの隙を見極める。
「グッ」
殺気に勘付かれた。キングはそのままこちらへ走って来る。しかし俺にとっては好都合だ。
構えを取る。腰を一段低く、足に力を入れる。当然ながら、走って来る間の相手は無防備。
棍棒を振るスピードは速いが、その動作に移行するまでが長過ぎる。
ズドン、ズドン。
一歩、一歩と近づいて来る。しかし、
スッ、と一閃。
勝負はたったの一撃でカタがついた。
まさに必殺技。
上がる血飛沫。飛び散る肉片。
それが自分のものになるとは、キングは思いもしなかったであろう。
「なんだあれ…」
「すげえ!」
戦地では歓喜の声が上がっていた。
残されたゴブリンも走ってどこかへ消えていき、ようやく戦いは終わりを迎えた。
…さて、それじゃあ一番の目的を達するか。
俺はキングの巨大な肉を指差し、崖から観察しに来た依頼主に向かって、
「この肉、持って帰ってもいいですかー?」
夕暮れと血に染まった荒れ地の下で、ありったけの力を込めて叫んだ。
その後…依頼主から小刻みに分けてもらったキングの肉とレメル50枚(一番の活躍を果たしたため通常より多く貰えた)、そして依頼を終えた証としてバッジを貰い、犠牲になった勇者の埋葬をした後、王都へと戻った。
今日はそのままご飯も食べず、ベッドへと一直線。そのまま深い眠りについた。
あのお兄さんは大丈夫だったかな、なんて事を思いながら。
…夢の中で、師匠の姿を見た。
あんな「夢」と一緒に思い出してしまったのだろうか。
…上半身が切断され、目は虚のまま、赤く染まった床に倒れ込んでいる、もう二度と思い出したくもなかった姿を。
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