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プロローグ/ジョブシステム
AGE.18600(太陽暦2800年)における人間界。文字通り人類が住まう領域であり、西大陸のおよそ3分の2を占める領域だ。
1000年ほど前、「終末戦争」と呼ばれる多種族間星圧戦争にて、星は終末を迎えた。
地は裂け、天は割れ、母なる海には生命体の血が流れ出し、ついには波ひとつ起こさぬ無の紅き海へと変貌した。
しかし、その戦争の末に(どうやったかは全く不明だが)人類は勝利した。
…が、魔族の王「魔王」は死んではおらず、西大陸の最西端にて魔界を作り戦力を蓄えていた。魔族は30年前に人間界に攻め入り、人間界の中で結成された軍「人界軍」が応戦を試みたが、すぐに壊滅。
高度な魔術を用いる魔王軍に弓や木製の盾、剣などが敵う筈もなく、人類は苦戦を強いられていた。
そんな中、人類の王ユダレイ・タッカーダル四世は、争いの素となるとして封印していた「魔術」と「ジョブシステム」を解放する。
人界軍の中でも魔術を用いた「魔導大隊」が結成され、人界軍も魔術を使って応戦する事により、魔王軍の一方的な蹂躙にも歯止めが掛かってきた時だった。
魔術が解放された事により、一般市民も魔術に触れる事が出来る様になり、15歳を超えた若者の一部は「勇者」として魔術や剣術などを学び、戦場に赴くようになった。
「…これが、人界の歴史じゃ。…お前も行くのか?あの地獄のような戦地へと」
老人は確かめる様に少年に問う。
「もちろん。俺は昔から、戦う事しか生きる理由が無かったから」
少年は老人との別れを寂しく思いながら、隣にいる老人に笑顔で伝えた。
「それじゃあ、行ってきます」
老人は一度笑顔になった後、少年のこれから歩むであろう道を不安げに見つめながら、少し震えた声で、
「死ぬんじゃ、ないぞ」
と呟いた。
それが老人との、俺を育ててくれた恩人、ジャンおじさんとの最後の会話となった。
…なったのなら、よかったものの。
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