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———ある日にて。〜望郷〜
…ある日、彼らは天を仰いだ。
人殺しの少年は、自らのやった事を悔いながら。
朧げな頭で、「それは悪い事だ」と自覚しながら、空に浮かぶ星々を仰いだ。
金髪の少女は、眼前にて起こった惨状を信じられずに、ただただ絶望を感じたまま、空に浮かぶ……月を眺めた。
戦うことしか教わらなかった少年は、自分のただ一人の仇敵を探しながら、月を眺めた。
才能のかけらもない少年は、ただただ打ちひしがれながら、苦し紛れに月を眺めた。
未だ戻らぬ主の帰りを待つ天使は、天涯を信じて月を仰いだ。
排斥された獣人の少女は、自らの運命を呪いながら、それでもと抗い月を眺めた。
ただただ生きていただけのドワーフの少年は、特に意味もなく、ただただ衝動的に……月を眺めた。
最終兵器は、自分がアイするべき運命の人を信じて、月ではなく空に浮かぶ星々を眺めた。
師匠はただ、「予言」を信じ、空を仰いだ。
アイに溺れ、世界を呪った撃墜の王はただ一人。
ずっと昔に置いてきてしまった全てを悔やみながら、空に瞬く星々を眺め、消失した。
魔族の王は、ずっと昔に置いてきた感情に呆れながらも、空に瞬く月を眺めながら、この世界を祝福した。
舞い降りた天使は、遥か遠くに未だ有る、モノクロの楽園を仰ぎ続けた。
———また、ある日。
人殺しの少年は、果てしなく遠い故郷を眺めながら。
しかしてそれは、自分が手に入れるものではないと、自らの運命を拒否する。
その末路はどこか虚しく、悲惨なものであったが。
少年はそれでもいいと、自らの宿命を受け入れた。
……まだまだ、ずっと先の、とある日の話だが。
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