夏の話

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 次郎彼はそば屋で働いていたが、生まれた時からやくざものとは一切縁はなかった。  彼はそのお汁粉屋の娘のきくという名前の娘と付き合っていた。  そば屋の仕事は楽ではなかった。 お汁粉屋の仕事も大変だろうと彼は彼女を認めていた。 「お汁粉派は大変だな」 「そば屋こそ大変でしょ」 「楽なものよ」 「そういう人に限って苦労しているのよ」 「そういうひとに限ってか?」 「そんなものじゃない」 「辛い人は楽だなんて言わないかな?」 「本当に体は苦しい時に笑っていられるの?」 「それもそうだな」 「気持ちは表われるものよ」 「それもそうだな」  とおきくの家まで送って次郎は自分の家まで歩いた。  翌日そば屋の仕事をしていたらやくざものが来たので、次郎は顔を見ないようにしていた。 「かけそばですね」と次郎は言った。 「そばの量が少ないじゃないか」 「そうですか」 「もっと入れろ」 「失礼しました」 「早くそばを足せ」 @わかりました。  次郎はフォンぶりを持つとそばを盛り溶け直した。 「はい」 「それでいいのだ」 「ありがとうございます」
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