夏の話

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「きくとかいう娘と仲はいいのか?」 「恥ずかしいですよ」 「婚約でもしたのか?」 「いいじゃないですか」 「いいことだな」  そこに別にやくざものは来た。  「やくざもの同市話すかと思ったがかけそばを食べていたやくざものはそば代を払って店を出て行った。何か逃げるように店を出て行ったので後に来たやくざものはよほど怖い人なのかと次郎は考えた。 「そばなんてそんなに多く盛らなくていいからな」とその別のやくざものは言った。そのやくざものは無言でそばを食べた。はじめのうちやくざかと思ったがどうも違うような気はした。 「うまいな」と彼は満足したようすだった。  次郎は不思議な人だと彼のことを思った。彼はそばを食べて機嫌良さそうであった。すぐに店を出て行った。  いろんな人がいるのだな、と彼はやくざものというものは少なくないが、それにしてもやくざにもいろいろな人はいるのだとわかった。 「やくざなんてダニみたいなもの」と女将は言って不機嫌だった。
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