夏の話

「堅気に手を出さないやくざものいるのだよ」とそば屋のだんなは言ったが気分絵ある走と言うか気難しい顔をしていた。そんなことを話していただ少しだけの間厨房に沈黙があった。
「話は変わるがきくとかいう娘とはどうだ」
「それなりです」
「いいことだな」
「あまりうまくいっていないような気はするな」
「そろそろ婚約したらどうだね」と旦那は言った。
「いいですね」と次郎は答えた。
「やくざに近付かれたらおしまいだよ」
「そんな話あの人あるんですか？」
「どのひとのことだ？」
「きくと」
「関係ない」
「驚いたな」
　次郎はきくと会って話していた。
「怖い目にあわせてやる」とそのやくざものはおきくに向かって言った。
「どうしてそんなことを言うのですか？」と次郎は言った。
「気に入らねえ」
「何を言っているのですか？」
　きくは黙っていたが、体は震えていた。
「勘違いするなよ」とその男は次郎に言った。
「訴えてやる」と次郎は少し怖がりながら言った。
「本当に勘違いするなよ」
「何かあったら捕られるだけだ」
「捕らえてやるから」