夏の話

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「自分で捕らえてどうするのですか」 「勘違いしているな」とやくざものは言って姿を消した。 「きくに怖い目にあわす訳ではない」 「怖くなったのですか?」 「それは怖いぞ」 「怖いです」 「今にわかるよ」とその男は道を歩いて離れて行った。  それから数日後の夕方次郎はきくと道を歩いていた。  本物のやくざものに囲まれた。万事休すと思った時にまたやくざが来たのかと思った。きくを脅したやくざものが走ってきたのだった。これで終わりかと思ったら 「御用だ」声は聞こえた。 「小者だ」とやくざは逃げはじめた。そのやくざものは同心のものだったらしかった。 「やくざを怖い目に遭わせてやると言ったのだ」  小者たちはすさまたでやくざを押さえつけて捕らえた。小者たちは二十人くらいいただろうか四人のやくざは全員捕らえられた。 「ありがとうございます」 「いいんですよ」 「勘違いをしていました」と次郎は謝った。 「助かってよかった」 「夫婦になるのだろ」 「何故知っているのですか?」 「顔に書いてある」 「顔に書いてありますか」 「そば屋のだんなに聞いた」
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