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「何者だ?」とそば屋のだんなは言っていた。
「関係ねえ」と言ってその男だか女だか、若いのか歳をとっているのかわからない人は、帰って行く気配はした。
「次郎とキクさんたちの結婚をじゃましようとしているのか? あのやくざ」とだんなは言った。
次郎は頭をおしぼりで冷やしていた。
「こんなつらい目に合うのなら夫婦にはならないほうがいいのでは。私たち結婚はやめましょうか?」
「やめない」
「私はやくざに目をつけられているかもしれません」
「それがどうした」
「また殴られるかもしれない」
「舞わない」
「私でいいのですか?」
「当り前よ」
「信じていいの?」
「信じてくれ」
きくは泣き出したが嬉し涙だろうと次郎は思った。
「おいらはあなたを必ず幸せにしてみせる」と次郎は彼女に告白と言うかだめ押しと言うかそんなことをした。
そんなことをしているうちに次郎の恋していた彼女の家族はばらばらになってしまったのだ。
「湯屋に行っています」ときくは歩いて行ったのであやしいと思った次郎は後をつけた。湯屋に着いたがどうやら混浴らしかった。
「男に売る気か?」
「見ていたの?」
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