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彼との別れは突然だった。
彼は私に
「俺は香奈にとって、必要な存在なのかな。もっと頼ってほしかった。これじゃ、一緒にいる意味がないと思う」
「だから別れよう」
と言った。
私は何も言えなかった。
だって、あまりに彼が苦しそうだったから。
私の目を1秒も見ることなく放たれたその言葉は、2人に挟まれたテーブルにあっけなく落っこちていった。
まるで、それは私に向けられた言葉ではなかったかのように、音を立てずに、静かに沈んでいった。
私は、“お前は1人でも生きていけるだろ烙印“を押されたのだ。
「あなたが必要かどうかは私が決めることだろ」
それくらい言ってやれば良かったと今さらながらに後悔する。
いや、本当に言わなければならなかったことは、そんなことではない。
「あなたが必要だよ。だから、そばにいて欲しい」
そう言うべきだった。
しかし、私は言えなかった。
そこまで強くなかった。
その本当の思いを伝えた上で、捨てられてしまった時の立ち直り方を私はまだ知らない。
まだまだこの小さなプライドを守っていたいのだ。
守るべきものは、もっと他にあるはずなのに。
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