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10-03:再逢の約束を携えて
「桜も知っての通り、僕は厄介な身の上だ。きっとこの先も普通に生きることは難しいだろう。僕自身には何の力も富もない。それでも僕が僕らしくいられるのは、この刀岐の邸にいる皆や、支えてくれる人達の優しさがあってこそのもの。……それだって、確実に永遠に続くものとは限らないだろう」
銀は続ける。
「どこまで生きられるのか分からない。あと数年かもしれないし、数十年かもしれない。けれどその時自分が今と同じ環境で生きて行けるのかも分からない。僕という存在はとても不安定なものなんだ」
常にその不安は頭の中にあったのだろう。
今こうして暮らしていられる己の環境は、少しの変化で脆く崩れてしまうもの。例え出自がどのようであったとしても。いや、だからこそかもしれない。
それを銀は、よく分かっているのだ。
淀みない銀の心からの言葉。昂明も頼央もその言葉に聞き入った。
「仮に――何年か先、たとえ誰かと一緒になる事ができたとしても、その先にあるのは希望とは限らない。そもそも許されるのかも分からない。大げさかもしれないけれど……最悪山でひっそりと身を隠しながら暮らすことになるかもしれない。自分が思うように生きたいと思えば、刀岐の世話になる事は出来ないだろう。きっと不自由もする。それがどれ程のものか……正直想像もつかない」
その言葉に反して、銀の表情は暗くはない。不思議な事に、微かに笑っているようにすら昂明には見えた。
「それでも。裳着を済ませ一人前になった頃。もしも、まだ桜が望んでくれるのならば……僕は必ず桜のことを迎えに行く」
桜は驚いたまま、暫く何も言えない。
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