10-03:再逢の約束を携えて

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 ずっと考えていたんだろ、と昂明(こうめい)が言うと(しろがね)は笑って「ああ」と答える。  心からの桜への言葉。  (しろがね)のその気持ちが桜に伝わったのだ。 「裳着(もぎ)を終えたらすぐにでも戻ってくるんじゃねえか」 「さあ」  (しろがね)はそう言って寂し気に笑う。 「(やしき)の外に出たら、色んな出会いもあるだろう。僕のことなんてすぐに忘れてしまうさ」  あそこまで言っておいて、この式神は本気で思っているのだろうか?  昂明(こうめい)には分かっている。  桜は絶対に(しろがね)のことを忘れたりなどしないだろう。  そのことに(しろがね)が気づくのはいつになるのやら……。     * * *  季節が巡るのは早い。  あれから夏が終わり、秋が来て、そして冬が訪れた。  初めの頃は桜の消えた(やしき)は寂しいね、などと(しろがね)や兄達と語らったものだったが、今ではそれもすっかり慣れたものだ。  それに、あれから一度も桜に会っていない訳でもない。  昂明(こうめい)達が頼央(よりなか)の元を訪れる時、桜は決まって出迎えてくれる。そうして、待っていたとばかりに(しろがね)の元に駆け寄るのだ。  あれだけ泣いて昂明(こうめい)達の元から離れるのを嫌がった桜だが、今ではすっかり頼央(よりなか)(やしき)での暮らしにも慣れ、頼央(よりなか)の娘達とも仲良くやっているらしい。(こと)の稽古やら読み書き、歌合や貝合、毎日語り切れぬほど学んで遊んで……それを話してくれる桜の顔はきらきらとしていた。  裳着を済ませたらそんな顔もおいそれと見られなくなるのかもしれない、そう思うと少しの寂しさも過るのだが。 「桜は随分姫様らしくなったな」
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