10-03:再逢の約束を携えて

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 手に持つ枝をくるくると回しながら(しろがね)が呟く。衣を被って良くは見えないが、その顔は微笑んでいるように見える。  久しぶりに会った桜の姿を、(やしき)に帰る道すがら思い出す。  裳着(もぎ)もまだだというのに駄々をこね、細長(ほそなが)姿で昂明(こうめい)達の前に姿を見せた桜は、刀岐(とき)(やしき)にいた頃よりもずっと姫らしく、昂明(こうめい)から見ても愛らしかった。崖下で彼女を拾ったのがもう遠い昔のことのように思え、なんだか無性に寂しくも感じてしまう。 「最近じゃいっちょ前に歌なんか詠むようになったらしいぜ」  (しろがね)の手にある桜の枝には、蕾と共に桜からの文が結び付けられていた。昂明(こうめい)が「なんて書いてあるんだよ」と茶化せば、「まだ読んでいない」と仄かに顔を赤くする。  満更でもない式神の顔を見て、春は近いと思う昂明(こうめい)だった。 『船岡の 雪消(ゆきげ)待ち侘ぶ 山桜 つもる白さを 面影にして』  ――白い雪を見ると、いつだってあなたの事を思い出します。船岡山(ふなおかやま)の山桜は、早くあなたの元に行きたいと願っています。 <了>
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