罪なパパ健気な僕

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 僕のパパは旧車専門の自動車修理屋オーナー兼メカニックで旧車好きを対象にしたユーチューバーです。こう言うと、君のパパって中々だな、凄いなって思われるかもしれませんが、二酸化炭素濃度の高い排気ガスを撒き散らしても地球温暖化とは関係ないと言い張り、走ってる時は勿論の事、空吹かしとか平気でやって排気音を良い音やなあと楽しんでます。僕の将来のことはお構いなしに自分さえ楽しければ良いとばかりに・・・  要するに、「地球温暖化と二酸化炭素の因果関係はない」派に属し、もし、お前は地球温暖化を推し進めている!と抗議を受けても、そんなことは知らん知らん!そもそも地球温暖化なんかしとらん!とうっちゃっておく旧車好き原理主義者であります。  僕はこんなパパを持って当然、将来が不安になるのですが、口には出しません。パパの御機嫌を損ねるし、もし、パパが物分かり良く二酸化炭素を撒き散らさなくなったら、それはパパの仕事がなくなることを意味するからです。  僕は小さい頃からパパの旧車に乗せてもらってドライブを楽しんでいたのですが、地球温暖化のことを知ってしまってからは手放しでは楽しめなくなりました。でも、上辺では一途に楽しんで見せてパパを喜ばしています。  或る夏の夜も車好きが集まる大黒パーキングエリアまでドライブしたんですが、そこで僕がユーチューブにアップする動画を助手席に座った儘、スマホで撮影していますと、おじさんたちがパパの車に寄って来ました。これは海ほたるPAや芝浦PAや辰巳PAなど車好きが集まる他のPAでも大抵そうなるので僕はこの現象を「おじさんホイホイ」と名付けています。で、おじさんが集まって、じーとエンジンルームを覗き込んでいる時は「安定おじさんホイホイ」と名付けています。  そんな時、パパは御機嫌そのものになるのですが、罪な大人たちと思わない訳には行きません。渋々撮影する僕の気持ちなんてこれっぽっちも理解できないだろうなあとおじさんたちをスマホの画面を通して眺めていました。ライトアップされたようにクリーム色に照り映えるジャンクションのうねりを眺めてもあの上をガソリン車が一杯走っているのかと思うと、うんざりします。方々で自慢げにブーブー言ってるエキゾーストノートを聴いても然りです。  でも、「暑かったか?」と撮影が終わった後、パパに訊かれた僕は、「窓開いてるから涼しかった」と嘘をついてまでパパを綻ばせてやりました。これは健気なことなのでしょうか?それとも罪な親に媚び捲るさもしいことなのでしょうか?多分、後者なのでしょう。  僕は罪悪感を覚えましたからカーボンニュートラルに微力ながら貢献しようと庭に木を植えました。これだけで罪滅ぼしが出来るのか?とガソリン車を走らせてる訳でもないのに疑問に思う僕は、矢張り健気なのでしょうか?少なくともパパよりは健気なのでしょう。      
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