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(妻)
本当にわかってないわね。
秘密なら墓まで持っていきなさい。やるときはそういう覚悟でやるべきよ。子供の頃、「人を傷つけちゃいけません」って学校で習ったでしょう。それを破ろうってんだから。
人の痛みに鈍感だから軽く考えてるのよね。そこが致命的。そうでなかったら、ずっと家族でいるつもりだったのに。
私は墓まで持ってくわ。まだ人として最低限の思いやりってもの、持ってるつもりだから。
あなたには絶対に勘づかれないよう、彼とのメールも写真も残さなかったし、会うのもスパイのように変装、遠回り、偽名、通話履歴の削除。どうとでも言い訳がつくように何重にも用心をして。
だからね。ようやく息子が本当の父親と暮らせるようになった今も、「離婚後に知り合った相手と再婚」というストーリーを崩す気はない。息子は母親に似るっていうのを信じて、あなたはまるで気づかなかったようだけど。
「じゃあ何なの。私の方が浮気したとしたら、謝ればあなたは仲直りできるの?」
私のその質問に、あなたは絶句した。わかってるわよ、言わなくたって。
だから私も同じ答えを叩きつけただけ。
(完)
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