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普通に考えて、少年の家族は関係者を恨むだろう。中学の時のいじめが理由とわかっていたら、いじめた加害者を断罪しようとするかもしれないし、学校側に訴えを起こそうとするかもしれない。
それがもし、もし。行き過ぎたところまで暴走してしまったら。
そして――人違い、に気づかなかったら。
『皆さん、お目覚めのようで何よりデス』
「!」
突然、教室に放送がかかった。私達はぎょっとして、スピーカーの方を見る。
男か女かもわからないその声は、はっきりとこう告げたのだった。
『既にお気づきかもしれませんガ、皆さんが集められた理由は他でもありまセン。復讐のためデス。……私達の大切な家族である倫太郎は、自殺未遂を起こして現在入院中デス。目覚めるかどうかもわからない状態なのデス。……全て、全て。倫太郎をここまで追い詰めた、お前達のせいデス』
冷え切った教室に響く、絶望の声。
『私達は、絶対にお前達を許さナイ。その部屋にはカメラがありマス。あと三十分以内に……お前らがいじめで隠した、あの子の大切な曲の楽譜の場所を白状しなサイ。反省して、その楽譜のことを黒板に書けば、命だけは助けてあげマス。でもそうしなかったら、お前達に待っているのは死、あるノミ。その部屋を、爆破しマス』
「ま、待って!」
私は慌てて叫んだ。
「わ、私達はその子をいじめた吹奏楽部の人間じゃない!吹奏楽同好会の人間なの、その子とはほとんど喋ったこともないの!!貴方たちは別人と誤解してる、間違えてるの!!」
しかし。私の叫びをよそに、スピーカーはぷつりと切れてしまった。
ああ、と。絶望のまま、その場に座り込む他ない。だってそうだろう。
やってもいないことを、一体誰がどうやって反省できる?
そして、知りもしない楽譜の場所を黒板に書ける?
――な、なんでこんなことに……!
迫りくる死の恐怖の中。ひたすら、私達は呻き声を上げるしかなかったのである。
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