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教室のリゼット
目を覚ましたら、見知らぬ天井だった――なんて。どこかのロボットアニメにでもありそうな展開だが。実際に自分がそんな状況に置かれた時、パニックにならない人が果たして何人いるだろう。
これが、病院で治療を受けているベッドだというのならまだ話が別だが。ベッドどころか冷たい床に寝かせられており、天井からは無機質な蛍光灯?らしきものがぶらさがっているともなれば混乱するのも無理からぬことである。
「え……え?」
私は慌てて体を起こした。確か、自分は今日も普通に高校で部活をして家に帰る最中であったはずだ。コンビニに寄ってカフェオレを買って、そのまま駅に向かおうとしていたところまでは覚えている。が、そこから先の記憶がまったくない。
当然、こんな場所に足を踏み入れた覚えも。
――な、何ここ?どういうこと!?
そこは誰がどう見ても――学校の教室、だった。それも、中学校くらいの教室である。後ろには習字の作品が貼りだされており、日直のところには子供っぽい字で名前が書かれている。そして、何よりもずらずらと並んだ机たち。そんな教室の一番後ろの空いたスペースで、私は倒れていたということらしかった。
異質なのは、電気がついていて明るいものの、窓は全てベニヤ板が打ちつけられていて開かないということである。外の景色を見ることも叶わない。それは、廊下側の窓も同じだった。
「う、ううん……」
「!」
近くで呻き声が聞こえて、はっとしてそちらを見れば。やや明るい茶髪の少年が床に横たわっているのが見えた。有名な進学校の青いブレザー。すぐに誰だか悟って、私は慌ててそちらに駆け寄る。
「ふ、吹雪君!吹雪君!しっかりして!」
それは、中学の時同じ部活動に所属していた少年、峰岸吹雪だった。高校では別の学校に進学したが(私は彼ほど頭が良くなかったのでどうしようもない)、それでもメールや年賀状のやりとりは今でも続けているし、時々電話することもあるくらいには仲が良い。
見れば、吹雪の向こうにも二人ばかり見慣れた姿の人物が倒れているではないか。艶やかなポニーテールに、私と同じ制服の少女。その奥には、小柄な黒髪の少年も蹲っている。
――早映子に、駿!?なんで、二人までこんなところに……!?
戸田早映子、藤崎俊。どちらも、中学の時同じ部活の仲間だった二人だ。
私の頬を冷や汗が伝う。明らかに、状況がおかしい。これはひょっとして。
「み、みんな起きて!大変だよ!!」
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