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「あー、なるほど」
この教室が、二年二組の再現だとすると。その二年二組のクラスに何かがあって、犯人はそれを訴えたいということなのだろうか。
「なんか、メッセージ性が強そうな教室だよな」
吹雪が机の中を覗きこみながら言う。
「俺らの共通点は、みんな吹奏楽同好会に所属した仲間だったってことだろ?それ以外に何かあるか?あと……一応訊くけど、人に恨まれる心当たりは?」
「無いよ。ていうか、四人一緒に拉致られてるんだから、四人ともに共通の心当たりがないとおかしいでしょ」
「そりゃそうだ」
うんうんと頷く吹雪。そしてはっきりと言った。
「俺自身はともかく、お前ら三人がイイヤツだってのは俺が一番よーく知ってる。お前らみたいな友達思いのやつが、無理やり誘拐されて酷い目に遭わされるような理由はないな。よし、ここから出たら犯人を一発殴ろう!」
「わーお過激」
あはは、と私を含めた三人から笑い声が上がった。ドアも窓もベニヤ板で打ちつけられた部屋。それでも、仲間がこれだけ一緒にいるのだからという安心感が少なくともこの時はあったのである。きっと、自分達はなんとかなると。
「俺達が選ばれた理由は置いておいて。この教室のセッティングからして、旧二年二組が何か関係してるんじゃねえかなと思うんだけど。俺も二組じゃなかったから、どんなクラスだったかは知らないんだよな。……駿、お前のクラスで、なんか変な出来事はなかったか?誰かが不登校になったとか、いじめがあったとか、先生がパワハラセクハラ魔人だったとか」
「ないない」
机の中を一つ一つ覗き込んでいた駿が、ひらひらと手を振った。
「良くも悪くも地味なクラスだったもん、中二の時なんて。少なくとも僕が知る限りでは、誰かがクラスでいじめられてるなんて話は……あ」
「どうした」
「これ。この机だけ、なんか入ってる」
どれどれ、と皆が駿の元に集まった。彼が見ていたのは、廊下側から数えて二行目、前から一列目の席だった。
駿が引っ張り出したものを、机の上に置く。それは、一枚の五線紙だった。
否、元は一枚の、と言うべきか。それは真っ赤な油性ペンで落書きされた上、真っ二つに引き裂かれていたのだから。
「え、なにこれ酷い」
私は思わず眉をひそめた。五線紙はところどころ音符が躍っていて、誰かが曲を書いている最中だったということがわかる。それに、悪意のある誰かが落書きをして、しかも破って台無しにしたのだろうということも。
思わず、私は仲間達と顔を見合わせた。これは、誰がどう見てもいじめの痕跡ではないか。
「なんだよこれ!人の作品を台無しにするとか、最低じゃねえか!」
「だよね……」
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