台風の夜

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外が暗くなるにつれ、風が強まってきた。 一人暮らしのこの古いアパートにある隙間から台風の予感となる風が吹き込んできている。 「コーヒーお代わり飲む?」 いつも通りの声で彼に声をかける。 きっと気づかれてはいないはず。 「え、あ、・・・」 明らかにためらっている。 風が強まってきている。 自転車でここまで来た彼はそろそろ帰りたいのだろう。 「ほら、私普段はコーヒー飲まないのに多く入れちゃったから」 「あ、うん」 足止めできた。 そうだよね、大好きな彼女の友達から相談があると言われて来てみたら、大した相談事じゃないのにこんなに足止めされて。 けどね、好きになったのは私が先。 だからね、一緒にいたい。 「風がすごいね。 このアパート風がすごいと建物が揺れる気がして、ものすごく怖いんだ。だから…」 彼女みたいに上目づかいでお願いしてみる。 「風がおちつくまでいっしょにいてほしい」 驚いた顔をする彼。 「もうすこしだけ・・・」 突き放されたらあきらめようと思っていた。
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