火口へ

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熊本市内まで戻ってきて、人気のラーメン屋さんに寄ることにした。 「美味しいですね。この黒い油が特徴でしょうか?」 「マー油ですね。私も久しぶりに食べたけど美味しい!」 その後は、熊本城へ行った。地震の被害の補修がまだ終わってなくて、天守閣まではのぼれなかった。 「そろそろ帰りの時間ですね?」 「そうですね…、行きましょうか?」 レンタカーを返して、新幹線乗り場へ向かう。 「榊原さんは世界中行ってるから、時差ボケって経験してると思うんですが」 「ありますね、それでもだいたい飛行機の中で調整できますけど」 「すごいですね。あ、そうじゃなくて。榊原さんが住んでいる所と、ここでは、なんとなく時間の流れ方が違う気がしませんでしたか?」 「んー、物理的には同じでしたが……そうですね、ゆったりしている感じがしました」 「不思議ですよね、なんでだろう?」 私もよく感じる、そんなあやふやな感覚を好きな人と共有できたのはうれしい。 「ゆったりしてたのに、楽しすぎてあっという間でした」 榊原さんが言う。 「ホント、あっというま。あ、来ましたよ、新幹線」 九州新幹線で博多まで行き、乗り換えて私は名古屋まで、榊原さんは東京まで。榊原さんが窓側私が通路側に座る。 「さてと、少し仕事をしますね」 「じゃ、私も」 それぞれパソコンとスマホを開いて、メールの返事や書類作成をする。
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