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ワインの会
部屋に戻ると、食事の準備ができていた。
「お酒はどうなさいますか?」
「あの、すみませんが、ワイングラスを二つ、用意していただけませんか?一杯めはどうしても飲みたいお酒がありまして」
「かしこまりました」
「ありがとうございます。二杯目からはオススメをいただきますので」
榊原さんは、いつのまにか部屋の冷蔵庫から赤ワインの小さなボトルを出していた。
「それって?」
「はい、この日のために持ってきました。荷物になるので小瓶ですが」
「これは、ワインの会ですね?」
「そうです、やっと第一回めが開催できることになりました」
ワインの会とは、美味しいワインに詳しい榊原さんが、ワイン初心者の私のために、美味しいワインを教えてくれる会のこと。
【ワインの会憲章】
1.ワインの会のワインは、美味しいものであること
2.必ず対面であること
3.参加者は会員のみであること(限定会員二名)
なんだかんだ言って、二人で美味しいワインを楽しみましょうという、それだけのことだ。
半分ふざけて作ったワインの会憲章が、ここできっちり守られていることが、榊原さんらしくてうれしくなる。
赤ワインは、冷蔵庫から出して1時間ほど置き、16℃くらいが飲み頃……らしい。コルク栓を抜きながら、ワインの産地や味の特徴について説明する榊原さん。
「では、久しぶりの再会に、乾杯!」
「乾杯!」
カツン!とグラスの音がして、二人だけのワインの会が始まった。
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