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「あなたは、ぜんぜんへんじゃないよ」
少女の手の中で、クローバーの葉が涙で揺れていた。
「がっこうでも、けんちゃんいじわるするんだ」
「おまえきもいからしねって、いうんだ」
「そうなの、ひどいね、先生とか家族に言った?」
「そんなん、いえないよ、しんぱいするもん」
ラミは少女の頬をつたう涙を指でぬぐった。
すると、少女は、ラミの指を見ながら、ゆっくり顔を上げて言った。
「お姉ちゃんなら・・・。みてあげれるとおもう」
「あまいにおいだよ、涙、頬につけて、おねがい」
「えっ、涙を、私の頬に?」
ひとしずくの涙をこれほど不可思議な想いで目の前に置いたことはなかった。
春の優なる空に光るその指の涙からは、確かに甘い香りがした。
涙は頬に近づいていった。
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