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「でもおれも人のこと言えねーっす。軽四ドライバーなのに、毎日ヒイヒイ言いながら配達してるし。トラックのドライバーみたいに、配達も集荷も営業も……なんて考えただけで気が滅入ります」  そう言った相良の視線はどこか遠い場所を見ていた。新卒の社員として、シバイヌに入ってきた相良は、そろそろ入社して四ヶ月ほどになる。ここに入社した社員のほとんどは、最初は配達員として、誰か先輩のドライバーの横について、配達や集荷など、基本的な業務を習う。そして、車の運転の研修をみっちりと受けた後、実際に自分の担当コースと車両を当てがわれ、今度は先輩ドライバーが横乗りをして、実際に集配をしながら独り立ちを目指すのだ。新人が入社してから独り立ちするまでには、大体二ヶ月程度かかる。相良は独り立ちをして、ようやく二ヶ月が経過したということだが、まだ彼の名札には彼が新人ドライバーであることを示す、若葉マークがついている。このマークをつけている新人には、営業所の先輩たちが一丸となって、気にかけてあげなければならないのだ。 「おれ、やっぱ向いてないのかなあ」
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