2人が本棚に入れています
本棚に追加
カチャンと音を立てて、相良が持っていた箸がお盆の上に落ちる。僕は思わず、相良の背中に手を触れていた。汗が染み込んだポロシャツの湿った感触が、少し気持ち悪い。それでも僕は、この二十歳そこそこの後輩を慰めてやらねばならない衝動にかられていた。
「大丈夫だよ。僕も、新人の頃は毎日必死だった。あ、今もだけど。相良はよくやってると思うよ。先輩らの手を借りず、なるべく一人で頑張ってるらしいじゃん。それって中々すごいと思うよ」
「そうっすかね……だって、皆さん忙しそうですし、おれのせいで皆さんに負担かけたくないですし」
「えらいよ」
相良は僕の言葉にフッと笑って「あざっす」と言うと、再び箸を持って、残りの飯を書き込んでいった。
月並みな会話が、相良の心情にどんな影響を受けたのかはわからないが、彼は食事を終えると嬉しそうに「久しぶりに話せて楽しかったっす」と言い残し、そそくさと現場に戻っていった。僕も食堂を後にして、午後の配達へと出発する。僕なんかの言葉で、相良の気が少しでも晴れたなら、僕だって嬉しいことだ。
最初のコメントを投稿しよう!