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 しかし、普段あそこに鍵はかけないはずだ。夜中は知らないが、少なくともドライバーがまだ作業をしている時間帯はいつでも開閉ができるようになっている。相良が中から扉を開けられなかったのは、誰かの過失で、もしくは故意に、扉を開けられないようにされていた、ということだろう。 「だけどそれを誰かにやられたとして、どうして神田川さんの名前が出てくるんだよ。今のままだと、営業所の全員が犯人だって言えるだろ」 「それだけじゃないのよ。先週だったかな、更衣室で、神田川さんが相良くんに詰め寄ってるのを見たって人がいるの。なんか、お前の配達が遅いから俺が帰れないみたいなことが聞こえてきたから、ちょっと気になって中を覗いたら、扉に背中を向けて神田川さんが立っていて、その向こうに相良くんが怯えた表情で立ってるのが見えたって。着替えの途中で神田川さんが入ってきたのか、相良くんはくしゃくしゃの制服をぎゅっと握り締めて、汗びっしょりだったって、言ってたわ」 「やることがえげつないなあ」
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