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思わず頭に血が上る。
俺はキョーマに掴みかかる勢いで距離を詰めた。
「勝手なことしてんじゃっ!!」
「だまれ」
その低い声で勢いのあった俺の足が止まる。
その冷たい眼差しで頭に上った血が急に引いていく。
この感覚は、思い出す。
このガキに殺された記憶が強烈に。
キョーマは俺からクソガキに視線を移した。
そしてたった数秒前とは別人のように優しい声で話しかける。
「えっと、君、名前は?」
「…クレイ=マテリア」
「そっか。クレイちゃんか。クレイちゃん、あのダンベルっておじさんとはどういう関係なのかな?」
クソガキは一瞬俺の方へ視線を移して答えた。
「仕事仲間だ」
「そっか……あのおじさんも仕事仲間って言ってたけど、それって本当なのかい?」
「本当だ。俺は魔術の研究でこの国に来たんだ。それであいつは仕事の助手みたいなもんだ」
クソガキめ。
いつの間に俺は助手になってんだ?
ふざけやがって。
つーかそんな嘘が通じるわけねぇだろ。
これでもっと怪しまれるぞ。
「うーん…疑ってるわけじゃないんだけど、もし、もしね、君がその言葉をあのおじさんに言わされているのだとしたら正直に言って欲しい。あのおじさんにひどいことをされているなら本当のことを話して欲しい。そしたら僕が君を必ず助けてあげる。悪いおじさんをやっつけて、君をこの街から出してあげるから。僕を信じて、声を上げてみて」
腰を下ろしてクソガキの肩にそっと両手を置き、真剣な眼差しでその幼い瞳を覗き込みながらキョーマは言った。
ああ。
終わったかもな。
クソガキがここで俺を裏切れば、キョーマは間違いなく俺を殺してクソガキをこの街から救い出すだろう。
今度こそクソガキに断る理由はねぇ。
俺がクソガキなら平気で裏切る。
それが賢い選択だ。
逆にそれ以外の選択なんてあんのか?
所詮はたまたま成り行きで一緒に行動してるだけの盗賊。
自分の命より優先するはずがねぇんだ。
いいよ。
そうやって生き延びればいい。
今回に関しちゃてめえに助けられたこともあったし、恨みっこなしだ。
まぁ、けど、もうてめえと組むことは二度とねぇだろうけどな。
俺は永遠に誰にも頼らずこの町で死に続けて
「ふざけんなバーカ」
「え?」
あ?
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