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「街から出たい。できればすぐにでも。だからあんたが街から出る時に俺らも一緒に行きたいんだ」
「っ!?んん…」
店主は目の前に落ちている金貨に手をつけず、顎に指を添えて考え出した。
金貨を差し出されても悩むほどの事なのか?
「はっきり言えばこれでは割に合わないですねぇ。魔王軍の検問に引っ掛かれば命に係わる。金貨一枚で応じられる頼みごとではありません」
「ああ!?んだてめ」
「ダンベル!」
込み上げてきた怒りがクソガキの声で抑えられる。
それで止まる俺もどうかと思うが、なんだか今のクソガキには妙な迫力があった。
「ならこれに銀貨二枚をつけよう。それでどうだ?」
「銀貨二枚ですか…ふむふむ…まぁないとは思いますが…銀貨ではなく金貨二枚であれば十分検討の余地はありますねぇ」
この野郎。
完全につけあがってやがる。
こいつをぶっ殺して金を巻き上げて、より高額な値段で次の商人と交渉した方が良さそうじゃねぇか?
そう判断して、今度こそ斧に手をつけたときだった。
「分かった。じゃあ金貨を二枚渡す。それでこの街から俺たちを連れ出してくれ」
「なっ!!!おいクソガキ!!!それはいくらなんでもっ!!!」
「ただしそれ以上の追加はなしだ。金貨三枚以上は払わない。いいな」
「おい!!!」
クソガキの出すぎた真似にイラつきその小せえ頭を掴むが、ガキは一切こちらに注意を向けることなく店主をガン見していた。
「これはこれは!冗談で言ったつもりだったのですが本当に用意があるのですか!なら流石に私も真剣に考えなければなりませんね」
店主も俺をいないものとしてるみてえに話を進めた。
「金貨三枚…難題ではあるが無理な話ではない…」
店主はまた顎に指を添えて考え始めた。
そしてこの交渉の結果を出す。
「いいでしょう。金貨三枚。それであなた方をこの街から出して差し上げます」
「交渉成立だな。頼んだぜ」
「ええ任せてください。ただ出発の準備に少々時間をいただきますのでご容赦ください」
マジかよ。
こんなにあっさりと決まりやがった。
いや失うものがでかすぎだろ。
金貨三枚て。
半年は遊んで暮らせるぞ。
肉屋のぼったくり店主に金貨二枚を放り投げた。
店主は目の前に転がり込んだ三枚の金貨をにやけた面で売上を入れている袋にしまい、蝙蝠頭の護衛を置いてどっかに行く。
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