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「あなたたちには荷台に乗ってもらいますが、当然そのままでは魔王軍の検問に引っ掛かります。なので一旦このテント用の布にくるまってください」
クソガキ用なのか一回り小せえ布も渡された。
言われた通りその布で横になったクソガキを包む。
頭だけ出して全身包んでいるその様はまるでミノムシだ。
「さああなたも。手伝いますから同じように布に身を包んでください」
蝙蝠頭の亜人に手助けされながら俺もクソガキと同じミノムシになった。
ミノムシの状態で地面に並べられて、なんだか二人して馬鹿みてえだ。
こんなんで魔王軍の目をすり抜けて街から出れるのか?
「それでは仕上げに入ります」
店主がそう言うと蜘蛛頭の亜人が俺に覆いかぶさってきた。
どういうことだ?
これは何をするつもりだ?
俺の頭に忘れられねぇ記憶が甦ってくる。
まさか、まさかな。
そのためにこうして布で包んで動けなくしたわけじゃねぇよな。
嫌な予感が当たらねぇことを祈っていたが、蜘蛛頭の亜人は考えられるなかで一番悪い行動を取ってきた。
野郎は俺の胸板辺りに口である鋭い管をぶっ刺しやがった。
「お、おい!!何しやがる!!が、ああ、く、くそ」
管を通じて俺の体にわけの分からねぇ毒が入れられ、その直後から全身に痺れが走って力も入らなくなった。
蜘蛛野郎は同じようにクソガキにも覆いかぶさり、寝てんだか気を失ってんだかわからねぇが目をつぶって動かねぇクソガキの胸にも口を刺して毒を注入する。
おい。
嘘だろ?
こいつら、裏切った?
金貨までやったのに裏切ったのか?
だが考えてみりゃこいつはどう考えても俺たちが間抜けだった。
こんな無法な場所でまともな取引が成立すると思っていた俺らがアホ過ぎたんだ。
この店主からすればそんな危ねぇ交渉に乗っかる必要がねぇ。
そんな馬鹿な交渉をしてくるカモを騙して、殺して、金目のものを奪った方がいいに決まってる。
「ああ!!あう!!ぐうあ!!」
口元まで麻痺してうまく言葉がでねぇ。
ちくしょう。
これで終わりだってのか。
またこの蜘蛛野郎に内蔵をドロドロに溶かされて食われるのか。
俺も…クソガキも…。
「恨まないでくださいね。ひひひ」
肉屋の店主がクソったれな笑みを店ながら俺の頭に袋を被せてきた。
肉でも入れてた袋なのか血生臭い。
そしてなにも見えない。
真っ暗だ。
まるで俺の明日みてえに。
毒の効果なのか徐々に意識も薄れてきた。
五感も段々薄れてくる。
意識の…ねぇ内に死ねればまだいい方なんだけど……な。
せめて苦しまずに……死にてえよ。
ああ……寝みい……また……だめ………だった……じゃ………ねぇか…………くそ……………が……………………き…。
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