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Ⅳ
目を覚ますと目の前が真っ暗だった。
これは初めてだ。
死んだはずなのに俺の家に戻ってねぇ。
何か変わったのか?
ん?
いや待て。
体に布が巻き付けられたままだ。
しかもこの血生臭さ、さっき袋を頭に被せられた状況と同じ。
つまり、殺されていない。
これは一体どう言うことだ?
二日酔いみてえに頭が回らねぇ。
しかもさっきから妙に体が揺れて頭に響いてきやがる。
とりあえず布を何とかしようと体を動かすが全く動かねぇ。
布でくるまれただけでこんなに手足が動かなくなるもんなのか。
このままじっとしてればどうなるんだ?
やっぱり蜘蛛野郎の餌にされるのか?
それとも生きたままバラバラにされて死肉でも売られるのか?
悪い妄想がどんどん膨らんでいく中、この暗闇に突然光が差し込んでくる。
穴だ。
俺に被せられた袋に穴が開けられた。
ちょうど眉間の辺りに開いていて、そこから赤い光が差している。
しかしその光はすぐ消える。
なぜならその穴を塞ぐようにナイフが刺し込まれたからだ。
ナイフは俺の顔に触れる寸前で止まり、そのまま布を切り裂きながら下の方へ走っていく。
おいおいこいつはあれか。
生きたまま三枚おろしにでもされるのか。
だが実際そんなひでえことは起こらず、俺に被せられた布だけがナイフで縦断され、その裂け目が左右に開かれる。
暗闇から一気に開けた視界に飛び込んできたのは真っ赤な夕焼け空だった。
そして赤い空を見ていると視界の横からふざけた面が覗き込んでくる。
「起きてたか。ダンベル」
クソガキだ。
生きてやがった。
しかも今は布でぐるぐる巻きにされてるわけでもなく自由の身になっている。
その一方で俺は首から下が布で巻かれているうえに白い綿みてえな何かでさらに巻かれている。
まるで繭だ。
ミノムシの次は芋虫かよ。
「クソガキ。こいつはどういう状況だきょうだ?この俺の体に巻き付いている白いやつはなんだ?」
「それは蜘蛛の糸だ。亜人のな。そんじゃそこらの魔物では千切れねぇくらい丈夫なんだぜ」
ちょっと見覚えがあると思ったらそれか。
道理で体が全然動かねぇわけだ。
だけどなんでこんなことになってんだ?
そしてここはどこだ?
首もそんなに動かねぇから空しか見えねぇし。
「何があったんだ?俺は確か蜘蛛野郎に毒をもられて、意識が飛んで…」
「そう。毒で一時的に仮死状態になったんだ。魔王軍の検問を抜けるためにな」
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