04 少女の導き

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「へっそいつはご立派なことだ」 けっ! なんだなムカつくな。 ベンチだっけ? こいつのことはクソ野郎としか思っていなかったがこんな律儀な側面があったのかよ。 金が掛けられた取引なんざ裏切ったもん勝ちだろ。 盗賊の間では常識だ。 真っ当な取引をしていた馬鹿どもはみんな死んでいった。 だが今回はそんな馬鹿に助けられた。 こういうこともあるのか。 「感謝はしねぇぞ」 「もちろん感謝など不要です。お金を頂いた対価を提供しているだけですから」 すかしたことをぬかしやがって。 恩着せがましい一言でも言ってみやがれ。 「ところでこの馬車はどこに向かってるんだ?」 「マルシャ王国から西南にあるテリーノという町です。小さな町ですがアレス大陸の主要な国家間の中継点として栄えています。到着は明後日の早朝くらいですかね」 「…まさかとは思うが運賃は取らねぇよな?」 「いえいえ。金貨三枚も頂いておりますから追加料金は請求しませんよ」 「…あっそ。じゃ頼むわ」 「はい。居心地の悪い荷台の上ですが、到着までくつろいでいてください」 くつろぐねえ。 俺はいつ火の海に巻き込まれるか分からなくて気が休まらねぇよ。 荷台の後ろの方、北東の方角を見た。 相当はええ馬なのかマルシャ王国が豆粒みてえな大きさに見えるぐれえ遠くまで来ていた。 俺はここまでマルシャ王国から離れたことがない。 足には自信のある方だが、俺の足では精々マルシャ王国が握り拳ぐれえの大きさに見える範囲にしか移動できなかった。 ここまで離れればいくらなんでもあの大爆発には巻き込まれないかもな。 本当に俺は助かったのか。 隣のガキに助けられたのか。 体がくっつくほど近くに座っていたクソガキを見た。 さっきと変わらず湿気た面だ。 もう地獄は乗り越えたってのに。 「おい。辛気臭え面しやがって。クソみてえな街から出れて嬉しくねぇのか?」 「…ああダンベル…そりゃ嬉しいよ。お前を街から出せて」 「じゃあなんでそんな暗い面してるんだ?まだ心配なことでもあんのかよ」 「いや、ない。ないんだけど…」 クソガキは一瞬だけこっちに目を向けて言った。 「嫌なもん見られたなって思って」 「ああ?」 急になんだこのガキ。 話が唐突過ぎて全然分からねぇ。 嫌なもん? 俺、なんか見たか? 「…察しの悪い奴だなお前…俺が誘拐された後の話だよ」 「誘拐された後……ああ、見られたってあれか。お前がローにヤられてるところか」
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