00 それはある『転生者』の物語

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「はあ。神様ですか」 正直実感はないが、こんな空間でそう言われれば納得せざるをえない。 神様だとして話を聞いてみよう。 「それで、儀式ってどういうことですか?」 『簡単に言えば、あなたはとある異世界の住人が行った転生の儀式により、元居た世界から儀式が行われた異世界へと転生することになりました』 えーなにそれ。 また過酷な人生を生きる羽目になるのか? しかも異世界で。 儀式ってことはなんかファンタジー的な? 「なかなか滅茶苦茶な話ですね」 『そうですね。しかし悪い話ばかりではありません。あなたは不慮の事故で、若くして命を落としてしまいましたが、転生者となることで第二の人生を歩むことができます』 「いやーまぁ正直言うともう人生とかやり直さなくてもいいんですけどねー。欲を言えばナマケモノに生まれ変わりたいです」 『それに異世界への転生に伴い、我々の力を授けることができます』 「え?今なんて?」 『異世界への転生をする際、神の力を授かった状態で転生することができる決まりになっています。これは理不尽な異世界という環境へ選択の余地なく放り出された人間を救済するための措置だと考えてください』 ほーう。 「えっと、神の力ってどんなものですか?」 『我々6柱からそれぞれ力を授けます。具体的には、「無限の魔力」、「不滅の肉体」、「万象の英知」、「魅力の生気」、「七種の神器」、そして「精霊の加護」。本来であればもう一つ授けることとなっていたのですが、1柱、気まぐれな同胞がどこかへ行ってしまい、授けることができません。しかし6つの神通力があれば問題ないでしょう』 「…へぇー」 それは、余りにも魅力的だ。 つまりくそったれな現実というクソゲーをリセットして、初期状態からチートレベルの能力持ちで異世界ライフをスタートできるということ。 どれほど気持ちのいいことだろうか。 神の力をもって世界に君臨するというのは。 断る理由がない。 「なるほど。分かりました。転生を受け入れましょう。そもそも拒否権があるってわけでもなさそうですし。俺も…死ぬ前に未練が本気でなかったかと言われればそうでもない人生だったので」 『素直に受け入れてもらい、こちらとしてはありがたいです。それでは転生を始めますが、転生後の行動について少しだけ助言をしましょう。転生後、あなたはあなたを転生させた者たちの前に降臨しますが、彼らは初めあなたを警戒しています。しかし、敵意がないことを伝えれば、ことは上手く進みますから、転生後は彼らの話を聞き、彼らに従って行動してください。助言は以上です』
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