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『良子ちゃんへ
筆箱返して 私の大切な筆箱
ねえ 返してよ
私の髪ゴムも返して
うわばき どこにうめたの?
池ちゃんがかくしたうわばきを
どうして良子ちゃんはうめたの?
ゆるさない ゆるさない 絶対にゆるさない』
『池ちゃんへ
どうしてうわばきをかくしたの
どうして私の防災ずきんを燃やしちゃったの
池ちゃんがかくした私のうわばき
良子ちゃんがどこかへうめちゃった
ゆるさない 絶対に 返して 私の物 』
あぁ、やっぱりなっちゃんは全部知ってたんだ。
私のことも、良子ちゃんのことも池ちゃんのことも……。
隠した人、隠した場所も全部、全部……。
他の子の手紙には何が書かれていたのだろう。
きっと私たちと同じように
なっちゃんからのメッセージが書かれていたんだろう。
だからきっと宗太は慌ててなっちゃん家に行ったのだ。
怒りに行ったのか、謝りに行ったのか……。
昨日なっちゃんの家から帰るとき、
私は玄関から少し歩いたところでなっちゃん家の方を振り返った。
そこにはいつも笑っているなっちゃんが無表情で立っていた。
そして私と目が合うと口がわずかに動いていた。
「 」
あれはなんと言っていたのか。
私がなっちゃんから貰った封筒の中にはもう1枚写真が入っていた。
それは4年生の最初、
なっちゃんが転校してきたときにみんなで撮った集合写真。
1人ひとりの顔が黒く塗りつぶされており、
裏面には赤文字でこう書いてあった。
『 みんな ゆるさない 死んでもゆるさない 』
あぁ、なっちゃん。ごめんなさい、ごめんなさい。
私たちはもうなっちゃんに謝る事さえ
許されない。
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