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「これ見たんだ……。ねぇ、なんでこんなことしたかわかる?」
なっちゃんはお菓子のお皿の横にアルバムを広げて写真を撫でながらそう言った。私は少し下を向きながら首を左右に振った。
「ひどいよね、あの筆箱はお父さんが買ってくれたやつだったの。
ヘアピンは引っ越す前に東京の友達がくれたやつで、
上履きだってお母さんが夜遅くまで一生懸命働いて買ってくれたのに……」
あぁ、なっちゃんは全部知っているのだ。
そして私が今日ここへ何をしに来たのか、
何を言いに来たのかも分かっているのかもしれない。
そう思ったとき無意識に口から言葉が出た。
「なっちゃん、ごめん……ごめんなさい」
私はスカートの上でぎゅっと手を握ってなっちゃんの方を見た。
なっちゃんはアルバムの写真を撫でる手を止めてゆっくりと私の方を見た。
「どうして言ってくれなかったの。私すごく悲しかったんだよ。
いつも一緒に探してくれてたよね、知ってて探してたの?」
「ごめん、ほんとうにごめん。怖くてなかなか言えなくて……。
でもね!隠した子は知っててもそれをどこにやったのかは
私もわからなくて……」
私がそう言うとなっちゃんはいつものように笑って言った。
「そうなんだ。ほんとどこ行っちゃったんだろうね」
いつもと同じ笑顔なはずなのに、なんでかとても怖かった。
結局私は何も言えないまま、なっちゃんの家をあとにした。
家に帰ってきて自分の部屋に駆け込んだ私は、先ほど持って行った小さいポシェットの中から小さな消しゴムを取り出した。
可愛いケーキの形をした香り付きの小さな消しゴム。
私がなっちゃんの筆箱から取ったものだ。
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