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幽霊が出るキャバクラ6
老紳士はなんとも言えない微妙な表情で、つらつらと、時に酒を飲みながら、まるで独り言のように話す。
話しを聞きたいキャストの女のコ達の方はそちらに耳を澄ませて、話しを聞きたくないと言う様子の年上のキャストのお姉さん達の方は、それぞれ別の話を隣に座るコと小声で話はじめる。
「この店は何度も名前が変わっているし、何度も勤める女のコも入れかわっている。黒服だって、その上の役職の者だって、何度かかわっている。けれど、あの女のコだけはかわらない。ずっと居る。この店に、ずっと勤め続けている。酒を飲む仕事をしていると、精神が壊れてしまうことは良くあることだと思う。その女のコもそうだった。そして、その女のコは一人の客の来店を今でも待っている」
そのような話だったと思う。
私も精神をぶっ壊していたので、その幽霊に少々親しみを覚えた。
会えるものなら会ってみたいが、仲良くなるのは避けたい。
何せ幽霊なのだから、ついてこられても困ってしまうし、憑いてこられるのはもっと困ってしまう。
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