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そうして、河川敷に着いた頃。
気付けば、もう既に音は鳴り止んでおり。
つい先程まで咲き誇っていた花も、その全てが掻き消えていた。
夜空に浮かぶ爆煙が、その虚しさを加速させるばかり。
…ダメだった、結局僕は、たった一つの、ちっぽけな約束すら、守ることはできやしなかった。
河川敷に着くまでに、何度か転んだことによってついた傷をおさえ、落胆しながら家へと戻る。
それまで走ってきた道には、うっすらながらも水滴のような跡がついている。
その跡は、自分の不甲斐無さを、「約束」の儚さを表しているようで、とても嫌になった。
家へと帰り着いた頃。家の前に、誰かしらの人影を…数人ばかりの人影を、見つけた。
「え……なん…で……ここにいる…の…?」
涙で滲んだ眼前には、龍信君と、その取り巻きが数人立っていた。
「なんで……何でだろうな…気まぐれ?」
口を開いた龍信君に、思わず抱きつきに行く。
「のわっ?!…おいおいやめろ、恥ずかしいだろ」
「……でも、でも……僕…見れなかった…行けなかった…!」
「見れなかった……?……ああ、花火大会か。俺たちは見たけど、みんなで見れなかったのが寂しかったよな…」
「じゃあ、何で……何でここにいるんだよ………!」
先程と同じ質問だった。………しかし、返答は違った。
「何で……そりゃあ、もう察しはつくだろ?」
そう言って、龍信君が服から取り出したのは、何本もの線香花火セット。
「何、で、それ、いつ、買いに行って……!」
そうだ、いくら花火大会が終わったとて、こんなものを近くの百均に買いに行く時間なんて、ないはずだ。
それも近くの百均ならば、ここから1キロも離れた場所にある。
買えるはずが、ないんだ。
普通に考えて、花火を見た後で、買う時間なんてないはずなんだ…つまり、龍信君たちは……!
「……それじゃ、剛…
……花火、見ようぜ」
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