屈辱の夜

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 そうして、塾に週6日で通う日常が、1ヶ月ほど続いた頃。  中学に入り、ずっとひとりぼっちだった僕にもようやく友達ができた。  名前は…「龍信(りゅうしん)」君。  俗に言う「陽キャ」軍団のリーダー的存在で、おそらく僕に話しかけてきたのも、僕がひとりぼっちだったからこその情け、みたいなもんだったんだろう。    それでも、夏休みまでの僅かな期間で、僕と龍信君はかなり仲良くなった。 「おい、(たける)、サッカーしないか? ちょうど人数が足りなかったんだよ」  ……剛は僕の名前だ。こんなに弱気な性格なのに、どうしてこんなに男勝りな名前を名付けられたもんだか。  人数が足りなかった、はウソだ。なぜなら、いつも龍信君と一緒にサッカーをしてる、ある男の子の1人が、その時は誘われていなかったからだ。  でも、教室で寝ているよりかはマシか、と、その差し伸べられた手を、僕は取ることになった。 「サッカー」なんて、勉強を強いられてきた僕にとっては新鮮でしかなかった。授業でもあまりやったことがなかったから、それはもう楽しくて仕方がなかった。  1回遊んで気に入られたのか、その後は何度も何度もサッカーに誘われ、龍信君やその取り巻き…仲間たちとも徐々に打ち解けていった。  だからこそ、ある日の……グラウンドから、教室までの帰り道。小走りしながらも、龍信君に聞いてみた。 「…なんで、僕と遊ぼう、とか思ったの?」 「いや、だってお前さ、ずっとひとりぼっちで寝てるだけだったろ?それじゃああんまりにも可哀想だな〜って……あ、ああ、もしかしてお前、みんなで遊ぶの嫌いなのか?!」 「い……いやいや、全然。むしろ楽しいんだ、こうやって遊んだのって初めてだし、新鮮だから」
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