「花火、見ようぜ」

1/3
前へ
/5ページ
次へ

「花火、見ようぜ」

 そうして、ようやく夏休みに入ろうとした頃、 「剛! 俺たちと一緒に花火、見ようぜ!」 龍信君とみんなで、夏祭りの花火を見る、という約束をした。  みんなのように携帯なんて持ってないから、口約束で大体は決めたんだ。  夏祭りは8月7日。ちょうど、塾のない日曜日だったから、ラッキーだと思いながら、その夏祭りの日を楽しみに待ち続けていた。  …が、7月末、親戚の葬式に出向き、その間塾を休んでしまった。  だからこそ。8月6日の夜、ママから告げられたのは、僕にとっては最悪の展開だった。 「……この前塾、休んだでしょ? だから代替えでこことこことここ、入れておいたから」  そう言ってママが赤ペンで丸をつけたのは、明日から3週間の間の日曜日。  当然ながら、8月7日も入っていた。 「え……8月…7日……行かない、と、ダメなの?今から、今から変更とかは無理なわけ…?」 「無理に決まってるでしょ…? もう夜も遅いんだし、早く歯磨きしてきな…」 「い……嫌だ」  またもや、ママは心底うんざりそうな顔をする。 「嫌だ、嫌だよ、明日、明日は夏祭りがあるんだ、だから僕行きたく……」 「夏祭り…? アンタ、そんなモノに行くつもりでいたの?」  そんな…モノ…? 「……だって、友達と約束したんだ…花火を、花火を見るって!」 「………っ…! ダメに決まってるでしょ、そんなの! アンタ、テストの成績がアレで、毎日勉強せずに済むと思ったわけ?! いい加減にしなさいよ?!」  ダメ、なの…?  明日は、夏祭り…いけないの…?  花火、見れないの? 「……分かった、明日は私が塾まで送るから。今日は早く寝なさい」 「…………………分か、った…」
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加