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「花火、見ようぜ」
そうして、ようやく夏休みに入ろうとした頃、
「剛! 俺たちと一緒に花火、見ようぜ!」
龍信君とみんなで、夏祭りの花火を見る、という約束をした。
みんなのように携帯なんて持ってないから、口約束で大体は決めたんだ。
夏祭りは8月7日。ちょうど、塾のない日曜日だったから、ラッキーだと思いながら、その夏祭りの日を楽しみに待ち続けていた。
…が、7月末、親戚の葬式に出向き、その間塾を休んでしまった。
だからこそ。8月6日の夜、ママから告げられたのは、僕にとっては最悪の展開だった。
「……この前塾、休んだでしょ? だから代替えでこことこことここ、入れておいたから」
そう言ってママが赤ペンで丸をつけたのは、明日から3週間の間の日曜日。
当然ながら、8月7日も入っていた。
「え……8月…7日……行かない、と、ダメなの?今から、今から変更とかは無理なわけ…?」
「無理に決まってるでしょ…? もう夜も遅いんだし、早く歯磨きしてきな…」
「い……嫌だ」
またもや、ママは心底うんざりそうな顔をする。
「嫌だ、嫌だよ、明日、明日は夏祭りがあるんだ、だから僕行きたく……」
「夏祭り…? アンタ、そんなモノに行くつもりでいたの?」
そんな…モノ…?
「……だって、友達と約束したんだ…花火を、花火を見るって!」
「………っ…! ダメに決まってるでしょ、そんなの! アンタ、テストの成績がアレで、毎日勉強せずに済むと思ったわけ?! いい加減にしなさいよ?!」
ダメ、なの…?
明日は、夏祭り…いけないの…?
花火、見れないの?
「……分かった、明日は私が塾まで送るから。今日は早く寝なさい」
「…………………分か、った…」
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