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ベッドに入り、部屋の電気を消す。
「もう嫌だ」その想いだけが、真っ暗になった意識の中でこだまする。
……その中でも、僕は結局眠ってしまった。
「もう嫌だ」
その想いだけを、ずっと抱きながら。
翌日の夜8時。
ママが車で僕を送ったものだから、通塾中に抜け出すことも叶わず、僕は結局、塾で勉強をひたすらこなしていた。
それでも、頭には全く入ってこなかった。入ってくるわけがなかった。
遠くにて灯る、祭りの光を眺めながら。
講師とただ2人、何の為にもならない問題をこなし続けていると。
舞い上がる火花。直後、あまりにも大きな破裂音と共に、夜空に花が咲く。
みんなと一緒に見たかったはずの花火がたった今舞い上がった。
もはや、ただただ自分の非力さを恨んでいた。
もっと僕に勉強の才能があれば、塾に行かずに済んだのに、と。
惚けた頭で朧げに考え、そして全てを諦める。
…が。
突如脳裏をよぎったのは、あの時みんなと交わした約束。
「絶対に行くからね」と言ったはずだ。
「みんなで見ような」と言われたはずだ。
僕は、「勉強なんて嫌いだ」って思ってたはずだ。
僕は、この夏祭りを、この一瞬を、楽しみにしてたはずだ…………!!!!
勉強道具を、可能な限り全てバッグに詰め込む。筆箱ももはや関係ない、ノートも教科書も、全てぐちゃぐちゃに詰め込んで、一度でも「行きたい」と思ってしまった足を動かす。
塾の先生は僕をなんとか押し止めようと、僕より後から塾より飛び出したが、もう既に僕はそこにはいなかった。
走る。
舞い散る儚い花の下で、たった1日の、たった一瞬の、儚い約束を果たす為だけに。
足がどうなったっていい、転んだっていい。
車にぶつかったっていい、雨が降ったっていい、脱水症状で倒れたっていい。
例え何が起こっても関係ない、だから、だからみんなと一緒に、僕は花火が見たかったんだ…!!
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