屈辱の夜

1/2
前へ
/5ページ
次へ

屈辱の夜

 あの日。  僕は、自らの無力さを嘆いた。   「…で、コレどういう事なの、きちんと勉強したワケ?!」  部屋全体に、ママの怒鳴り散らす声が鳴り響く。 「…もちろん、したよ……ママの言う通り、1日5時間、休日15時間。……でも、ダメだった」 「ダメだったじゃ……!」  ママの手が、僕の涙に濡れた頬を激しく打ち付ける。  本当だ、勉強したのは、本当だった。  自分なりにやり方を模索して、それでちゃんとやった。  もちろん、サボりなんてしていない。  それでも、中学最初の定期テストの点数は、全て50点を下回っていた。  だからママはこんなに怒ってる。  ママは、過程がどうよりも結果を重視する人だからだ。   「…無理だよ、やっぱり無理だったんだ、僕には90点なんて取れっこないよ…!」 「無理じゃありません、努力が足りないだけ………はあ、仕方ないけど、塾行きは確定、か…」  ママは心底うんざりそうに肩を落とす。    そんなに嫌なら、行かせなければいいじゃないか。  僕は、勉強を楽しいと思ったことは一度もない。だけど、ママが「しろ」と言うから、ママが「結果を出せ」と言うから、ロボットみたいに従ってるだけなんだ。  それでも、僕は正義感だけは一丁前に持ち合わせてるから、ヘンに期待に応えようと必死で頑張って、結局ダメになる。  どれだけ努力したって、どれだけ勉強したって、今まで結果が出たことはなかった。  そんな自分が嫌だけど、でも最大限の努力はしてたから、塾にも行かないといけないかな、とすんなり納得してしまった。
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加