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その呪いは、ネットで見つけたものだった。本当に効くのだ、と一部界隈で有名になっているものらしい。
悪魔を呼び出して対価を支払うと、その対価に応じた呪いを相手にかけてくれると言う。対価は先払いなので、後でとんでもない目に遭うなんてオチもない。試しても、ほぼリスクのないおまじないだと言って良かった。
勿論、悪魔とやらを呼び出せるかどうかは運もあるようだし、そもそもこのおまじないそのものが嘘ということも考えられる。それならそれで、用意しておいた別の呪法を試すまでのこと。
私は昔の学園ドラマのいじめっ子のような愚行は犯さない。相手を学校から追い出すために、自分が犯人だと晒すほど馬鹿ではないのだ。なんせ、私はあくまで彼女に居場所を奪われた被害者でしかない。あっちが一方的に悪いのに、何故私が加害者扱いされて糾弾されなければいけないのか。
だから、彼女への報復もネットの世界だけに留めたし、教室では堂々と悪口も言わないように気をつけている。本当に頭のいい奴は、ちゃんと頭を使って悪者を追い出して勝利するのだ。
「正義は必ず勝つってね……!」
場所は、自分の部屋。私の家は結構なお金持ちなので、持ち家もあるし広い私自身の部屋もちゃんとあるのだ。
学習机の上に、すでに色々とセッティング済みである。
ニヤリと笑って、私は魔法陣を書いた紙の上に蝋燭を立てて、100円ライターで火をつけた。そして、ネットで見かけた通りの呪文を唱える。
「アカサネア、ロイマリアカエ、シェ、シェ、シェ、シェス、ラナイコロイマハヤ、カスコロメリアンテ、ジェアル、ルアル、ユギユヤユセユデユガユサ、ユロウエンメテンケレユス、カゴ、カゴ、カゴ、カゴ……。アカサネア、ロイマリアカエ、シェ、シェ、シェ、シェス、ラナイコロイマハヤ、カスコロメリアンテ、ジェアル、ルアル、ユギユヤユセユデユガユサ、ユロウエンメテンケレユス、カゴ、カゴ、カゴ、カゴ……」
呪文の意味なんてさっぱりわからない。何かの言語なのかもしれないし、あるいは意味なんてまったくないのかもしれない。
しかし、ぶつぶつと呟いているうちに異変は始まっていた。蝋燭の炎が、だんだん紫色に変わり始めたのである。
ネットにも書いてあった――火が紫に変わったらそれは、悪魔が来てくれた証拠であると。
「アカサネア、ロイマリアカエ、シェ、シェ、シェ、シェス、ラナイコロイマハヤ、カスコロメリアンテ、ジェアル、ルアル、ユギユヤユセユデユガユサ、ユロウエンメテンケレユス、カゴ、カゴ、カゴ、カゴ……。アカサネア、ロイマリアカエ、シェ、シェ、シェ、シェス、ラナイコロイマハヤ、カスコロメリアンテ、ジェアル、ルアル、ユギユヤユセユデユガユサ、ユロウエンメテンケレユス、カゴ、カゴ、カゴ、カゴ……」
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