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やはり私は正しい。悪魔もそれをわかっているから、力を貸してくれようとしているのだ。私は嬉しくなって、自分の願いを告げた。
「お願い、力を貸して!私の居場所を奪ったあの女が許せないの……!あいつを、とびきり酷い目に合わせて!対価はここに用意してあるわ!!」
出来れば、顔面がぐちゃぐちゃになる怪我くらいして、二度と学校に来れなくなってほしい。あるいは、汚い男たちにレイプされて一生消えない傷を刻まれるのも悪くないだろう。
私が用意したのは、今までパパや親戚のおじさんたちにプレゼントされた豪華な貴金属だった。中には本物の金やダイヤモンドもある。私自身はデザインが派手すぎて趣味ではないが、相当な値段になるはずだ。これたけのネックレスや時計があれば、多少大きな罰を要求しても通るだろうという自信があった。
しかし。
『お嬢さん。お嬢さん。残念ながら、それでは対価になりませんヨ……』
「え?」
炎の向こうから聞こえてきた、機械のように濁った声は。どこか嘲るように私に言ったのだった。
『この呪法は、自分にとって本当に大切なのを差し出さなければ成り立ちまセン。その貴金属は、貴女にとってさほど価値がないものなので、対価にはならないのデス。貴女が本当に大切にしているもの……貴女自身の体や、美貌、才能、家柄……そういったものでなければ対価とはならないのデス』
「はぁ!?そんなの差し出せるわけないじゃない!!」
『それならば、貴女は相手の方に呪いをかけることはできまセン。残念でしたネ……』
何よ!と私は眉を跳ね上げる。自分自身の体や地位でなければいけないなんて、そんな馬鹿げた対価があるか。
話にならない。こんなに高価な貴金属を用意したのに、なんて傲慢な悪魔なのか。私が苛立ち紛れに、契約を取りやめることを言おうとしたその時だった。
『それに、この呪法は早いもの勝ちなのデス。貴女は既に別の方に呪われておりますので、その呪いが終わるまでは私の力はお貸しできまセン』
「え」
何を言っているのか、こいつは。この私が、誰か別の人間に呪われている?
「そんなわけないでしょ、私は何も悪いことなんかしてない!呪われる謂れなんかないわよ!!」
そう叫んだ、次の瞬間だった。蝋燭の炎が、突然真っ赤に変化し、天井近くまで立ち昇ったのである。
「きゃあああああああああああああああああああああああああああああああっ!?」
『何も悪いことなどしていない?滑稽ですネェ……』
くすくす、くすくす。
悪魔の嗤い声が響く。
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