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『貴女は散々、人をネット掲示板で誹謗中傷してきたではないですカ。その人が本当はやってないだろうことまで、噂を捏造してそれはそれは面白おかしく。自分ででっちあげた噂、真偽もわからない噂を書き並べた上、本人の容姿やちょっとした性格、喋り方の癖などを挙げ連ねて晒しましたネ……?それは現代の法では立派な犯罪行為の一つですし、人の心を殺すという意味では殺人となんら変わらないことなのでスヨ』
その言葉に、私は一瞬恐怖を忘れた。一気に頭に血が上ったのである。
「わ、私を先に呪ったって……あいつなのね!?あのクソ葛城が私を!やっぱりクソ女だったんじゃない、私がしてきたことは間違いなんかじゃなかったんだわ!!」
『おやおや、自分も呪おうとしていたくせに何を今更』
「私が呪いをかけるのは正当な権利よ!あいつにこんだけ不快な思いをさられて、プライド傷つけられて居場所を奪われて……私の心が先に殺されてるのよ!?正当防衛みたいなもんでしょ!!絶対許さない、許すもんですか、私のほうが正しいのに!!」
思わず、家の中であることも忘れて叫んでいた。自分がまるで悪のように断罪されるなど納得できるはずがない。あの女がクソみたいな正義感を振りかざして自分を苦しめなければ、自分だって掲示板に晒したり呪ったりなんてことはしなかったのだから。
悪いのはあいつだ。あいつ、あいつ、あいつ、あいつなのに!
『可哀想に』
喚く私に。悪魔は何故か、心から憐れむように言った。
『何故、転校してきたばかりの彼女に、多くのクラスメートが味方したのかもわかっていないトハ。単に、彼女に人望があっただけではないですノニ』
「なんですって?」
『おっと、もう関係ないですネ。そろそろ執行の時間デス。呪詛返しを行うこともできますが、どうしますカ?』
呪いを無効化するには、と悪魔はどこか楽しげに言った。
『葛城柚葉が差し出した左手の骨折……以上のものを。左腕の切断か、利き腕である右腕の複雑骨折ならば』
「い、いや!そんな痛いの、絶対……!」
『なら仕方ありませんネ』
反射的に拒否してしまった瞬間。炎の津波が、私に向かって襲いかかってきたのである。
『ご機嫌ヨウ』
髪の毛に、皮膚に、目玉に。全身に一気に血のように赤い火が燃え移った。
「ぎ、ぎゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」
どうして、こんなことに。自分は何も悪いことなどしていないのに。
全身を生きたまま焼かれる苦痛に悶えながら。私はそれでも、同じことを考え続けていたのだった。
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