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「さ、入って」
車を降りてすぐ、イッサの目に飛び込んできたのは、お城のような豪邸でした。
これからイッサの面倒を見てくれる宇佐美は、驚いた顔のイッサを見てニコニコしていました。
「本当にいいんですか。僕みたいなのがお世話になっちゃって」
イッサは宇佐美と出会ってからずっと、夢を見ている気分でした。
次々とイッサの身に降りかかる幸運が、イッサには現実のものとは思えませんでした。
イッサは今14歳の中学二年生。
2年前、不慮の事故で両親が天国に行ってから、今まで親族の家を転々としてきました。
どの親族の家に身を寄せてもイッサは厄介者扱いでした。
まるで親族でババ抜きをしているように、イッサはたらい回しにされていました。
そんなイッサが宇佐美と出会ったのは、ほんのさっきのことでした。
イッサは積み重なる親族のあまりにひどい仕打ちに耐えかねて家を飛び出し、さまよい、空腹に耐えかね、飲み屋街のゴミ箱を漁っていました。
「君、ちょうどよかった」
ゴミ箱を漁るのに夢中になっていたイッサは、そんなふうにいきなり宇佐美に声を掛けられ、驚いて飛び跳ねるように後ずさりました。
イッサは声の主を足元からゆっくり見上げました。
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