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死期を悟ると鳴くらしく、それまでは一度たりともさえずりはしないらしい。
そういう種類の鳥だそうで、その鳴き声を聞いたことのある者はこの世にそう多くはないと言う。
とはいえ、喋りますよね、あなただって。
と問うと、
ええまあ。
と返す。
おしゃべりとは違うんですよね、さえずりっていうのは、僕の祖母もその種の鳥で、一度だけ鳴き声を聞いたことがあるのだけれど、あれは何ていうのかな、ちょっと表現できないな。
と、遠い目をする彼。
あまりつっこんで聞くのもどうかと思ったが、ふと湧いた疑問が口から出た。
死期を悟るから鳴くのか、それとも鳴くと亡くなるのか。
それは、同じことじゃないかと思いますけどね。
と、彼は返す。
同じこと、ですか。
ええ、鳴き声を上げる、その後死ぬ、それだけのことで、何も特別なことじゃないんですよ、多分ね、死期を悟ると鳴くというのは、一つの方便なんです、まあ言ってしまえば、生きているうちに一度だけ変な声を出す、というのが正しい見方ですよ、その変な声というのが、どうしても死を感じさせるというだけのことで。
と、彼ははにかむように笑った。
そんなものかな、と思いつつ食事を終え、去り際に彼は言った。
期待させると悪いので、あらかじめ言っておきますが、僕から鳴き声を聞くことはできませんよ。
なぜ?
と問うと、さらに続ける。
もう鳴いちゃいましたからね、生まれたときに。
するとあなたは、死ぬんですか。
ええ、死ぬんです。
彼は優しく微笑んだ。
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