初恋花火が散ったとき

2/5
7人が本棚に入れています
本棚に追加
/5ページ
「なぁ咲久(さく)、今から花火しねぇ?」  咲久とは、私永見咲久(ながみさく)のこと。  誘ってきたのは、同じ大学に通う幼馴染みの金村流星(かねむらりゅうせい)だ。    彼とは家が隣同士で、私の部屋から彼の部屋までは僅か30センチ。 「いいけど、暑いよ?」 「夏らしいことしないと、あっという間に終わんじゃん」 「じゃぁ、アイス食べながらやろう」 「お、いいね! んじゃ、5分後に俺ん家に来て」 「分かった」     私たちはいつも一緒にいた。    夏休みになると、流星が私を花火に誘うのも恒例になっている。  二人分のアイスキャンディーとジュースを持って彼の家の前に行くと、車の運転席から流星が手を振っていた。 「え、庭でやるんじゃないの?」 「んー、なんか海の方が雰囲気あるじゃん。とりあえず乗って」    私は言われるがまま、車に乗り込む。 「ねへ、雰囲気ってなひ?」    アイスキャンディーを食べながら、問いかける。    だって、あんな言い方をされたら期待してしまう。   「ほっと、伝えたいことはって」    彼もアイスキャンディーを食べながら、そう答える。    私の期待は、胸の中で更に膨らんでいく。    もしかしたら、特別な想いを持っているのは、私だけではないのかもと。  もしそうなら、答えは決まっているけれど、どんな反応をしようかと。
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!